CUTIE STREET川本笑瑠に学ぶ仕事論。「誰が私を選んでくれるんだろう」と泣いた夜を超えて

CUTIE STREET 川本笑瑠 インタビュー 仕事論

はじめに

あるアイドルのインタビュー記事を、私はこれまでに50回以上読み返しています。 彼女の名は、**川本笑瑠(かわもと えみる)**さん。

彼女が所属するアイドルグループ「CUTIE STREET」といえば、デビュー曲**「かわいいだけじゃだめですか?(通称:かわだめ)」**が大ブレイクを果たしており、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。

その数字はまさに桁違いです。

  • TikTok総再生回数:62億回以上
  • ストリーミング累計再生数:2億回突破
  • TikTok週間楽曲ランキング:5週連続1位

https://www.youtube.com/watch?v=27w4hWpp2zM

惜しくも2025年の年末の紅白歌合戦には選出されませんでしたが、間違いなく今の日本のアイドルシーンを牽引する存在であり、多くの人の憧れの的となっています。

【川本 笑瑠(かわもと えみる)Profile】

川本笑瑠 CUTIE STREET 公式プロフィール画像

出典:PROFILE|CUTIE STREET OFFICIAL FANCLUB

  • 生年月日:2002年4月22日(22歳)
  • 出身地:神奈川県
  • 所属グループ:CUTIE STREET
  • メンバーカラー:オレンジ
  • 所属事務所:アソビシステム(KAWAII LAB.)

華々しいスポットライトを浴びる彼女ですが、最初からこの場所にいたわけではありません。 小学6年生で活動を始めてからこのデビューを掴むまでには、10年にも及ぶ長い下積み時代がありました。

「夢は叶う、とは簡単には言いたくない」 そう語る彼女の言葉の裏には、10年の重みと、私たちが仕事や生活の中で忘れかけている**「大切な真理」**が詰まっていました。

今回は、記事の言葉を引用しながら、私が彼女の姿勢から学んだこと、そして「陰徳陽報」という言葉を通じて感じた、働く上でのヒントを共有します。

1. 理想と現実が違っていても、腐らなければ「希望」は消えない

記事の中で特にハッとさせられたのは、彼女が小学6年生から始まった活動初期を振り返るシーンです。

幼い頃に憧れたキラキラした劇場とは違い、現実は地下のライブハウス。 当時の彼女は、あまりのギャップに衝撃を受けたといいます。

――いざ活動を始めてみて、どうでした?

川本: 思い描いていた世界とは全然違っていて、びっくりしました。私の中でのアイドル像って、AKB48さんみたいな感じだったんですよ。秋葉原の劇場で、キラキラした衣装を着て、ファンの人がたくさんいて……みたいな。でも、実際始まった活動は、地下のライブハウスで、Tシャツに自前のスカートみたいな衣装で。スカートも何着も自分で買わないといけなくて。メイクも髪型も全部自分でやるし、ファンもの方もその当時はあまりいなくて。

普通なら「こんなはずじゃなかった」「話が違う」と不貞腐れて、辞めてしまってもおかしくない状況です。 しかし、彼女は環境のせいにしませんでした。

川本: でも、失望とかは全然なかったです。自分の心の中はすごくキラキラしていて、ここから頑張っていけば夢は叶うって根拠なく思っていたので。だから、思っていた世界と違っても、頑張る気持ちは全然変わらなかったです。

「こんな地下でやっていたって誰も見てくれない」と嘆くのではなく、「今は違っても、頑張ればきっと夢は叶う」と信じて前に進む。 その純粋な**「希望」**を持ち続けた結果、彼女は10年越しに、かつて憧れていたキラキラしたアイドルの姿そのものになることができたのです。

【仕事へのヒント:不本意な状況での向き合い方】 仕事でも、理想と現実は往々にして食い違います。 希望していない部署、誰からも評価されない地味な作業。「こんなことをするために会社に入ったんじゃない」と思うこともあるでしょう。 ですが、そこで腐るか、「この経験もいつか糧になる」と信じて向き合うかで、未来は分岐します。 理想と現実が違っていても、自分の心持ち次第で、未来への可能性は広げられるのだと教えられました。

2. 「気持ち」は技術を超えて魅力になる

彼女がCUTIE STREETへの加入を掴み取ったオーディションは、5日間にわたる過酷な合宿形式で行われました。 周りには候補生がたくさんいて、歌もダンスも上手い子ばかり。

そんな中、彼女は深い劣等感に苛まれていました。 オーディション期間中、彼女は一度、大きく挫折しています。

川本: 最後の発表の前ですね。それまでは、本当にボロボロで。(中略)歌もダンスも自信がないのに、それを1人で見られるっていう状況がもう本当に辛くて。案の定、ボロボロでした。歌もちゃんと歌えなかったし、ダンスも思うように踊れなくて……できることなら、huluで放送しないでほしいって思ったくらいです(笑)。

その時の評価は散々なものでした。 ダンスの先生からは「何がしたかったのかわからなかった」、ボイトレの先生からは「途中でメンタルがやられちゃったね」という厳しい言葉。

しかし、そこで総合プロデューサーの木村ミサさんがかけた言葉が、彼女を救いました。

「メンタルを自分で保つことも、アイドルとしてすごく大切なことだから。たくさん泣いちゃってもいいけど、少しずつ自分の機嫌を上手に取って、頑張っていけたらいいね」

自分の機嫌は自分で取る。メンタルを保つこともプロの仕事。 その言葉を胸に、彼女は最後の課題へ挑みました。

川本: ここで絶対に受からなきゃいけないって気持ちで最後の課題に挑みました。間違えたりもしたけど、メンタルだけは絶対に崩さないって決めて、最後までやりきったんです。

「間違えたとしても、メンタルだけは崩さない」。 この決意が、技術を超えて審査員であるボイストレーナーの先生の心を動かしました。

川本: そしたら、オーディションの最後に、ボイトレの先生が泣いてくれて、「すっごく良かったよ」って褒めてくれたんです。(中略)「笑瑠の姿を見て、頑張ろうって思った」「あれはアイドルのあるべき姿だった」「人の心を動かしていたよ」って言ってもらえて。

近年、仕事の現場では効率やテクニックが重視されがちですが、彼女のエピソードは**「思考や感情は、必ず外見や行動に滲み出て、相手に伝わる」**ということを証明しています。

【仕事へのヒント:きれいごとよりも熱量】 どれだけ体裁の整った綺麗な資料を作っても、きれいごとの言葉を並べても、プレゼンをする人の腹の底に「熱意」がなければ、相手の心には響きません。 逆に、多少不器用でも、ミスがあったとしても、「どうしてもこれを届けたい」という純粋な想いは、理屈を超えて相手を動かす力になります。 小手先のテクニックではなく、まず自分の内面を整えること。それが結果的に、一番強い説得力になるのです。

3. 努力を続けていけば、いつか光が当たる

みなさんは**「陰徳陽報(いんとくようほう)」**という言葉をご存知でしょうか。 「人知れず良い行いをする(陰徳)と、やがて誰の目にも明らかな良い報い(陽報)がある」という意味の四字熟語です。

CUTIE STREETの躍進について、川本さんは「自分が頑張ったから」ではなく、「運やタイミングのおかげ」と謙虚に語ります。

川本: でも、自分が頑張ったから今があるとは、正直あまり思ってなくて。運とかタイミングとか、いろんなものが重なって、たまたまそうなったっていう気持ちがすごく強いんです。(中略)だから、やっぱり運と環境にもすごく恵まれていたなって、心から思います。

しかし、62億回再生という数字は、魔法のように突然現れたわけではありません。 10年間、報われない時期があっても腐らず、ファンへの感謝を忘れず、ひたむきにステージに立ち続けたこと。その**「人に見えない積み重ね(陰徳)」**があったからこそ、巡るべくして巡ってきた「陽報」なのだと感じます。

この姿勢を見て、私はある偉大なアスリートの言葉を思い出しました。 2004年、メジャーリーグでシーズン262安打という前人未到の大記録を打ち立てた直後のドキュメンタリーで、イチロー選手はこう語っています。

「結局は細かいことを積み重ねることでしか頂上には行けない。それ以外に方法はないということですね。」

野球界のレジェンドと、10年の下積みを経たアイドル。 住む世界は違っても、どちらも「人の心を動かす人気商売」であり、成功への道筋には共通点があります。

近道や魔法を探すのではなく、イチロー選手が言うように、彼女もまた「細かいこと」を10年間積み重ねてきた。 「細かいことの積み重ね」こそが、とんでもない場所へ行くための王道なのです。

【仕事へのヒント:チャンスが来た時に花開く】 仕事の成果や評価は、頑張った翌日にすぐ出るものではありません。 「こんなにやっているのに」と焦る気持ちを手放し、「今は陰徳を積んでいる時期だ」「細かいことを積み重ねている最中だ」と捉え直してみる。 そうして淡々と積み上げた信頼やスキルは、ある日突然チャンスが巡ってきた時に、一気に花開く可能性を秘めています。

おわりに

記事の最後で、彼女は個人の夢についてこう答えています。

川本: 個人で活動することがグループの力になればいいと思っていて。自分にできることなら何でもやっていきたいです!

個人の欲ではなく、グループのため、他者のために動く。 その利他の精神と、10年の重みに裏打ちされた言葉には、静かな凄みがあります。

うまくいかない時、つい環境のせいにしてしまいそうな時。 私はこのインタビュー記事を読み返します。

劇的な奇跡を待つのではなく、今日できることを丁寧に積み重ねる。 そんな当たり前のことの尊さを、川本笑瑠さんというアイドルが改めて教えてくれました。

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